Tuesday, July 31, 2007

「壊れた脳 生存する知」を読んで

脳梗塞後の脳と梗塞を起こした人はどうなってしまっているのか少しでも知りたいと思い「壊れた脳 生存する知」講談社 山田規畝子著を読んだ。著者自らが医師で若くして3回も脳梗塞を経験した体験談を著した貴重な記録であるという。他人(医者を含む)にはその症状が具体的にどうなっているのか理解してもらえず悶々とする。非常に興味深く読んだ。また、認知症と高次脳機能障害の違いなどがよく分かった。

高次脳機能障害→高次の脳の障害→つまり思考、記憶、学習、注意といった人間の脳にしか備わっていない次元の高い機能が脳の損傷によって故障する或いは失われる傷害で具体的には下記のようなことが現れるという。
 ・靴紐が結べない
 ・洗濯機やテレビの使い方がわからない
 ・スプーンやフォークをどうもって良いか分からない
 ・箸が使えない
 ・歯磨き粉のチューブで歯を磨こうとする
 ・長年住んでいる自室の間取りを忘れる
 ・近所で迷子になる
 ・「敬礼をしてください」といわれたのに「バイバイ」と手を振る
 ・隣に座っている友人を見て「猿がいる」という
 ・ボールペンで髪をとかそうとする
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 形の認識が苦手となり、特に頭頂葉のダメージでものの位置関係が理解しにくくなるという。
 ・靴の爪先とかかとを逆に履く
 ・配膳盆をびちゃびちゃにする
 ・和式便器に足をつっこむ
 ・トイレの水の出し方を思い出せない
 等々

また、視覚失認(視覚的にはものが見えているが「脳がものを見ている」のとは明らかに違う。つまり脳は目で見たものを見たままに正しく分析できない)、記憶障害、注意障害、喚語障害等色々な障害が出る。高次脳機能障害は知能の低下はひどくないので自分の失敗がわかると
いう。これはおかしな(脳である)自分が分かるから尚更つらいという。球麻痺症候群(舌咽神経・迷走神経・舌下神経が麻痺→このため喉が麻痺し嚥下困難、構音障害(発音が正しく出来ない症状)、咀嚼障害を生じるという

正に父の入院前このような症状が既に出始めていたようだ。周りから見ると食事の時にご飯茶碗も押さえなく、箸使いも何か変で口の中に入れたものが唇のコントロールが利かなくヨダレのように垂らす、食べているものが飲み込み難い症状が出ていた。

その他、更に今になって思い返すと「半側身体失認」と「半側空間無視」(自分の左半身や左側の空間に対し注意が向けられない)のため左側の空間に注意が行かない。その結果、例えば狭い場所を通ろうとするときものにぶつかる、ノブの付いた開き戸を開けるため自分の立ち位置がおかしい。いすに座るのにばかに遠くから腰を下ろそうとする等通常の感覚とは異なる仕草があった。

脳梗塞を起こした人でも、その後の強い意志により訓練をすることで脳内の変化として「グリア細胞が増えて再び情報が電気信号として脳内を走り出す」という正に生命の神秘といえることも不思議と起きている可能性を指摘している。

この本を書くのに色々な方にお世話になったと述べているが、先ずは本人がいかに頭で考えることと現実の動作のギャップを克服し乗り越えていくかという強い意志で乗り切ったかが理解でき感動せずには居られなかった。本人の強い意志以外には何もないと思われる。
機会があったら是非一読をお薦めします!

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