Sunday, July 15, 2007

「マニフェストを読み解く」を読んで

2007.07.15朝日新聞朝刊の「07'参院選 マニフェストを読み解く」を見て感じた事。

①高山憲之 一橋大学教授(公共経済学)によると5千万件もの年金記録が宙に浮いた背景には、現場を軽んじる日本の組織文化がある。年金の設計には人も予算も投じるが、後は社保庁に丸投げ。与党が社保庁の職員や労組を攻撃するのは気がかりだ。ガバナンスが決定的に欠けている。政権が交代しない限り社保庁は解体され、非公務員型の公益法人になると述べている。

ここで感じるのはガバナンスが決定的に欠けているには全く同感であるが、これは現状の体制を維持している自民党と役所の馴れ合いそのもの(常に自民党が官僚機構を温存している)である。今時現場を軽んじる日本の組織文化など霞ヶ関とその一部部分にしかない。眼力が問われる。

②広田照幸 日大教授(教育社会学)によると小泉時代の教育改革は、制度や補助金などの国の仕組みを変える構造改革の一部として進み、安倍政権は教育を中心に規範意識を重んじる教育基本法改正の保守的な流れを強め、学校選択や学校評価で競争を加速させようとしている。両者を貫くのは、予算を増やさず学校現場のコントロールを強める方向で教師の創意工夫や子供と向き合う時間を奪っているという。

この指摘は、どのような点がそのような結論に結びつくのか、また何を意図しているのか説明が不足している気がする。もう少しポイントを絞った所で丁寧な説明の中でコントロールが強められているという説明が欲しい。私のようなボンクラ読者には行間が広すぎて理解及ばず。

③片山義博 慶大大学院教授(地方自治)によると小泉改革は分権の本質を外していた。分権のかけ声でやった事は、中央集権の補強と温存だった。分権を進めるには、分権時代の主役である議会を改革する基礎工事が必要なのだ。先ずは議員の選び方から変えよう。教員の兼職を認めたり、サラリーマンがなりやすい制度・・・。道州制の推進も掲げるが、誰のために、何の目的でやるのかはっきりしないと述べている。

小泉政権がいかにも改革を推進・断行したかのようにワンフレーズパフォーマンスに踊らされていた事を指摘していて同感する。分権時代の主役である議会の基礎工事論は全く同感する。議会自身で議案を提案する比率が数パーセントだという低さは何を物語っているのか? お飾り議員の名誉職に税金ドロボーはまっぴらごめんだ。

④工藤泰志 言論NPO代表によるとマニフェストは出せばいいというものではない。明らかに内容が劣化しているのは自民党だ。スローガンと課題の羅列という従来型の公約に戻ってしまった。小泉政権ではマニフェストの意義が意識されていた。今回の参院選は安倍さんの「やりたいこと集」だという。「美しい国」の中身も何時までに実現するのかも分からない。本格的な消費税論議を参院選後に先送りしながら、抜本改革をやると宣言している。いったい、どんな内容の税体系を、何時までに作るのか。具体的に書いて約束してこ
そ、マニフェストだ。・・・問われているのは有権者の眼力だろうとある。

マニフェストについては、意図的に後退させている点を鋭く指摘している点には同感である。よくもこのようなマニフェストをぬくぬくと出しているという気がする。
政党は応急措置でごまかし続けるのではなく、歳入改革の具体像も含めた社会の全体像と選択肢を提案すべきだという点に全く賛成する。常に選挙は有権者の眼力が問われている。

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